業務を標準化したり、新人に仕事を教えたりする際に作られる「手順書」や「マニュアル」。
しかし、両者の明確な違いを説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。どちらも「業務をスムーズにするための文書」であることに違いはありませんが、その役割や作り方、使いどころは異なります。
この記事では、
を詳しく解説します。
さらに、分かりやすい文書を作成するためのポイントもご紹介するので、「自分が今、本当に必要なのはどちらだろう?」と迷っている方や、「手順書・マニュアルをもっと分かりやすく改善したい」という方の参考になるはずです。ぜひ最後までお読みください。
「手順書」は、特定の作業を一定の品質で誰もが再現できるようにすることが最大のゴールです。業務プロセスを細かく区切り、各ステップでやるべき内容を具体的に示すことで、担当者が変わっても同じように作業が行えます。
たとえば、経理業務であれば「請求書を発行する手順」を、システム操作であれば「ソフトウェアのインストール方法」を、ステップバイステップで示すのが手順書の役割です。
作業の正確性と効率化を重視し、読み手が迷うことなく実行できるように設計されます。
メリット
デメリット
手順書は「一定の作業を正確に再現する」ためのものです。担当者によるばらつきを抑えたい場合や、なるべく効率的に作業を習得してもらいたいときには非常に効果的ですが、その反面、全体像を俯瞰するのには向きません。
「マニュアル」は、業務や製品などに関する知識・情報を幅広く網羅し、読み手に全体像を理解させることに重きを置いた文書です。
手順の解説はもちろん、用語の定義や背景情報、よくあるトラブル・FAQなども含まれることが多く、読み手が「なぜその作業が必要なのか」「その業務が組織の中でどんな役割を果たしているのか」を把握できるように書かれています。
メリット
デメリット
手順書とマニュアルの違いをひと目で把握できるよう、以下に比較表をまとめました。自社の状況や目的に合わせて、どちらを優先すべきか検討する際の参考にしてください。
項目 | 手順書 | マニュアル |
---|---|---|
主な目的 | 特定の作業を再現・標準化 | 知識や全体像の理解を促す |
対象範囲 | 個別の作業やプロセスに特化 | 業務全体・製品全体・組織全体など広範囲 |
内容の特徴 | 具体的なステップ、操作手順が中心 | 背景説明、用語集、FAQなど幅広い情報を網羅 |
利用タイミング | 作業実行時に参照することが多い | 業務や製品の仕組みを学ぶときに活躍 |
更新のしやすさ | 頻繁に必要(ステップの変更に応じて) | 範囲が広く大掛かりになりがちだが頻度は少なめ |
適しているシーン | 定型業務、システム操作など | 業務理解、製品知識、ルール集など |
ここからは、よくある業務シーンに合わせて「手順書」と「マニュアル」を使い分ける具体的な例を紹介します。
新人スタッフが同じ作業を再現できるよう、最初に「手順書」を作るのがおすすめです。
この段階では新人に「背景情報」よりも「具体的にどうすればいいのか」を伝えるのが先決です。ある程度作業に慣れてきたら、なぜその作業が必要なのか、会社全体の流れではどのような位置づけになるのかといった情報を「マニュアル」で補完すると、さらに理解が深まります。
この場合は、「マニュアル」を先に用意して、ルールの全体像を理解してもらうのが有効です。
ルール共有が目的なので、幅広い情報を一度にまとめて提供する方が新人や異動者にとってわかりやすくなります。各ルールの細部に踏み込んだ具体的な作業手順が必要な場合は、別途手順書を紐付ける形で併用するとよいでしょう。
システムの操作手順が細かく複雑な場合は、「手順書」を中心に整備します。
システムごとに画面が異なるため、画面キャプチャや実際の操作例を豊富に盛り込むのが鍵です。また、システムの導入背景や利用目的など、もう少し広い視点からの理解が必要であれば、その部分だけマニュアルとしてまとめるのも一案です。
取扱説明書や製品仕様書は、典型的な「マニュアル」にあたります。
ユーザーが幅広いケースを想定して利用するため、「手順書」のように特定の操作だけを詳述するのではなく、「どういう仕組みで動いているのか」「どのようなシーンで活用できるのか」などの背景知識も網羅しておくと、理解が深まりやすくなります。
実は、手順書とマニュアルは併用することで相乗効果が期待できます。 例えば、新人教育では初日にマニュアルを使って組織の全体像を理解してもらい、2日目以降は手順書を使って実際の作業をトレーニングするといった使い方が効果的です。
また、社内のイントラネット上でマニュアルと手順書を相互にリンクさせ、必要な情報に素早くアクセスできるようにしておくと、業務効率が大きく向上するでしょう。
「手順書」と「マニュアル」はどちらも業務をスムーズにするための文書ですが、目的や内容・使いどころが異なります。
自社や部署の課題によって、優先すべき文書は異なります。たとえば新人教育ならまず手順書で作業の再現性を高め、慣れてきたらマニュアルで業務理解を補強する、といった段階的な使い分けが効果的です。
また、両者をリンクさせて運用すると、互いの弱点を補い合い、業務全体がよりスムーズになります。
「手順書」と「マニュアル」の違いを正しく理解し、状況に合わせて賢く使い分けること。それが、組織やチーム内での標準化・効率化、新人教育の質向上につながり、ひいては業務全体のクオリティを底上げする大きな鍵となるでしょう。ぜひ、この記事を参考に、ご自身の業務や組織で最適な文書を作成してみてください。
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