社内業務の標準化やノウハウ共有に不可欠なマニュアル。いざ作成しようと思っても、「どんなツールを使えば良いかわからない」「手軽に始めたい」と感じる方は多いのではないでしょうか。普段使っているMicrosoft OneNoteは、実はマニュアル作成ツールとしても活用できます。
この記事では、OneNoteを使ってマニュアルを作成したいと考えている方に向けて、そのメリット・デメリット、具体的な作成手順、作成時のポイントを、ファクトチェックに基づきより正確な情報にリライトして解説します。さらに、OneNoteでの運用に限界を感じた場合の代替ツールについても触れ、より効率的で高品質なマニュアル作成を実現するためのヒントを提供します。
結論から言うと、OneNoteでマニュアルを作成することは可能です。OneNoteはMicrosoftが提供するデジタルノートアプリで、テキスト、画像、ファイル、手書きメモなど、様々な情報を自由な形式で記録・整理できます。その柔軟性から、手順書や簡単なナレッジベースといった社内マニュアルの作成にも応用できます。
特に、Microsoft 365を既に導入している企業であれば、追加コストなしで利用を開始できる手軽さが魅力です。
ただし、OneNoteは本来、汎用的なノート作成・情報管理ツールであり、マニュアル作成に特化した専用アプリケーションではありません。この点を理解しておくことが、OneNoteをマニュアル作成に活用する上で重要になります。OneNoteの自由度の高い設計思想は、個人利用には便利ですが、体系的な構成や一貫性が求められるマニュアル作成においては、後述するような課題を生む可能性も秘めています。
OneNoteをマニュアル作成に使うことには、いくつかの利点があります。
Microsoft Office製品に慣れているユーザーであれば、直感的に操作できます。テキスト入力や基本的な書式設定、画像の挿入などが容易で、思いついたアイデアや手順をすぐに書き留め、形にしていくことができます。
OneNoteの検索機能は非常に強力です。ノートブック内のテキストはもちろん、挿入された画像内の文字(OCR機能)や、検索可能なPDFファイル内のテキストも検索対象となります。必要な情報を素早く見つけ出せるため、紙のマニュアルや静的なファイルと比べて情報へのアクセス性が格段に向上します。
テキストだけでなく、画像、スクリーンショット、音声メモ、動画、WordやExcelなどのファイル、Webページへのリンク、手書きメモや図形など、様々な形式の情報を1つのページにまとめることができます。これにより、視覚的に分かりやすく、多角的な情報を含むマニュアルを作成できます。ただし、ファイルサイズが大きいメディア(特に動画や高解像度画像)の直接的な埋め込みは、ノートブックの肥大化を招き、後述するパフォーマンス問題につながる可能性があるため、運用上の注意が必要です。
OneNoteのノートブックはOneDriveやSharePointといったクラウドストレージに保存されるため、パソコン、スマートフォン、タブレットなど、様々なデバイスからアクセスできます。Webブラウザ版もあり、専用アプリがインストールされていなくても閲覧・編集が可能です(環境による)。自動同期機能により、常に最新の情報にアクセスできます。
OutlookのメールをOneNoteに送ったり、TeamsのチャネルにOneNoteタブを追加したり、他のOfficeアプリで作成したファイルを埋め込んだりと、他のMicrosoft 365ツールとの連携がスムーズです。近年ではCopilot in OneNoteのようなAI機能との連携も進んでいます。普段からMicrosoft製品を活用している組織にとっては、作業効率の向上が期待できます。
複数のユーザーが同時に同じノートブックを編集できます。共有時には、ユーザーごとに「編集可能」または「閲覧のみ」の権限を設定できます。他の編集者によって加えられた、自身がまだ確認していない変更箇所が、ノートブック、セクション、ページのタイトルが太字になったり、ページ上の新規コンテンツが一時的にハイライトされたりすることで示されます。これは更新状況の把握には役立ちますが、Wordのような詳細な変更履歴の追跡や版管理機能とは異なります。
既にMicrosoft 365のビジネスプランなどを契約している場合、多くは追加のライセンス費用なしでOneNoteを利用できます。専用ツール導入の初期費用を抑えたい場合に魅力的です。ただし、後述するように、OneNoteの機能的な限界を補うための運用ルール策定、テンプレート作成・維持、定期的な棚卸しといった人的な管理コスト(隠れたコスト)が発生する可能性は十分に考慮する必要があります。これらのコストは、マニュアルの規模や複雑性、求められる品質レベルによって変動します。
ページのレイアウトや基本的な構成要素を定型化できるテンプレート機能があります。これを利用することで、マニュアル全体のデザインや構成に一貫性を持たせやすくなります。ただし、テンプレートは基本的に新規ページ作成時に適用するものであり、既存のページに後から適用して内容やレイアウトを一括変更することはできません。
これらのメリットから、OneNoteは特に、チーム内の非公式な手順書や、動的に更新されるナレッジベースのようなマニュアル作成に適していると言えるでしょう。
多くのメリットがある一方、OneNoteをマニュアル作成ツールとして本格的に利用するには、いくつかの重要なデメリットや注意点が存在します。
OneNoteにはページ単位での基本的なバージョン履歴機能はありますが、これは主に誤操作からの復旧などを意図したものであり、マニュアルに必要な正式な版管理(バージョニング)機能とは異なります。「いつ、誰が、何を、どのように変更し、承認されたか」といった詳細な変更履歴の追跡、特定の版への正確なロールバック、版ごとの比較、版数管理、変更理由や承認記録の紐づけなどは標準機能では困難です。これは、コンプライアンス遵守や厳格な品質管理・保証(QA)プロセスが求められるマニュアルにおいては、致命的な欠点となり得ます。
OneNoteの自由度の高い設計思想は、構造化された情報管理が求められるマニュアル作成の要件とは本質的に相反する側面があります。明確なルールなしに情報を追加していくと、情報の階層が複雑化し、どこに何が書いてあるか分からない「無法地帯」になりがちです。特に大規模なマニュアルや、多数の編集者が関わる場合に、一貫性を保ち体系的に整理し続けるには、強い規律と運用ルールが不可欠ですが、ツール自体が構造化を支援するわけではないため、管理コストが高くなる傾向があります。
Wordや専門的なDTPソフト、ヘルプ作成ツール(HATs)などと比較すると、OneNoteの書式設定やレイアウトオプションは基本的なものに限られます。印刷に適した精密なデザインや、特定のブランディングガイドラインに沿った厳密なスタイル設定、条件に応じて表示内容を変えるといった高度な機能はありません。
ノートブック全体での共有権限設定(編集可能/閲覧のみ)や、セクション単位でのパスワード保護機能はありますが、「このページはこの部署のメンバーだけ編集可能にする」といった、ページ単位やコンテンツブロック単位での柔軟かつ詳細なアクセス権限設定は、OneNoteの標準機能では基本的に実現できません。機密情報を含むマニュアルを安全に管理・運用するには不向きなケースがあります。
OneNoteの内容をPDFやWord文書として書き出す機能はありますが、その品質、特にレイアウトの再現性については、頻繁に問題が発生することが知られています。画像やファイルが多く埋め込まれた複雑なページでは、レイアウトが崩れたり、コンテンツが欠けたり、画像の解像度が低下したり、ファイル自体が破損したりする可能性があります。外部配布や印刷を前提とした、体裁の整ったドキュメント作成には大きな制約となります。
ノートブックに大量の情報(特に高解像度の画像や大きなファイル、長いページ履歴など)が含まれるようになると、アプリケーションの応答性が低下したり、ページの読み込みに時間がかかったり、デバイス間の同期に問題が発生したりする可能性があります。
これらのデメリットの多くは、OneNoteの基本的な特性に起因します。これらの課題を軽減するためには、ツール任せにするのではなく、運用ルールや管理体制をしっかりと構築・維持することが極めて重要になります。
OneNoteでマニュアルを作成する基本的な流れを、ステップ・バイ・ステップで見ていきましょう。
これが最も重要なステップです。実際にコンテンツを作成し始める前に、マニュアル全体をどのような構成にするか(大項目、中項目、小項目など)を計画します。ノートブックをファイルキャビネット、セクションを中の引き出し、ページを書類に例えるとイメージしやすいかもしれません。しっかり計画することで、後々の情報の混乱を防ぎます。
マニュアル専用のノートブックを新規作成します。「〇〇業務マニュアル」「△△システム操作手順」など、分かりやすい名前を付けましょう。保存場所は、個人利用なら個人のOneDriveでも良いですが、チームや組織で共有する場合は、権限管理がしやすいSharePointのドキュメントライブラリなどが推奨されます。
計画した構成に基づき、マニュアルの主要な章やカテゴリに対応するセクションを作成します。例えば、「1. 概要」「2. 初期設定」「3. 基本操作」「4. トラブルシューティング」といった具合です。セクション名も一貫性のある命名規則で作成しましょう。セクションが多い場合は、セクショングループでまとめることも可能です。
各セクション内に、具体的な手順や情報項目に対応するページを作成します。例えば、「3. 基本操作」セクションの中に「3-1. ログイン方法」「3-2. データ入力手順」のようなページを作ります。ページはインデント(字下げ)することで、サブページとして階層構造を作ることができ、より詳細な項目を整理するのに役立ちます。
作成したページに、テキスト、画像、表、リンクなどを挿入してマニュアルの内容を作成していきます。見出し、太字、箇条書きなどを活用し、分かりやすく情報を整理しましょう。スクリーンショットを多用する場合は、注釈を入れるなどの工夫も有効です。関連ファイルがあれば埋め込むこともできますが、ノートブックのパフォーマンスを考慮し、ファイルサイズには注意が必要です。
同じような構成のページを複数作成する場合は、ページテンプレートを作成しておくと便利です。見出しのスタイルや定型的な項目(目的、手順、注意点など)をあらかじめ設定したテンプレートを用意し、新しいページ作成時に適用することで、マニュアル全体の統一感を保ちやすくなります。
作成したマニュアルを、対象となるユーザーやグループと共有します。必要に応じて、編集権限を与えるか、閲覧のみの権限にするかを選択します。
これらのステップは技術的にはシンプルですが、その効果は「STEP 1: 構成の計画」の質と、作成・運用プロセス全体を通じた「一貫性の維持」への組織的なコミットメントに大きく依存します。技術的な容易さが運用上の課題を自動的に解決するわけではありません。
OneNoteの良さを活かしつつ、デメリットを補うためには、いくつかのポイント(ベストプラクティス)を押さえておくことが重要です。これらは主に、OneNoteが標準では提供しない「構造」や「規律」を、運用でカバーするための工夫です。
これらのポイントの実践は、OneNoteの機能的な限界を補うために不可欠ですが、その維持には相応の継続的な組織的努力と規律が求められ、担当者の変更や時間の経過とともに形骸化するリスクも伴います。
OneNoteは手軽で便利なツールですが、マニュアルの規模が大きくなったり、要求される機能が増えたりすると、その限界が見えてくることがあります。以下のような状況に当てはまる場合は、OneNote以外のツールの検討をおすすめします。
OneNoteの限界を超えるツール、特に専用のナレッジベースツールやマニュアル作成ツールには、以下のようなメリットがあります。
これらの機能により、マニュアル作成の効率が向上し、品質管理も容易になります。結果として、より高品質で、管理しやすく、利用価値の高いマニュアルを構築・維持できる可能性が高まります。初期コストや学習コストはかかりますが、ツール選択は単なる機能比較ではなく、マニュアルのライフサイクル全体(作成から更新、廃版まで)と、将来的な拡張性を見据えた戦略的な判断が重要です。これらの投資は、長期的な運用効率の向上、品質維持、コンプライアンス確保につながり、リスク低減にも貢献する可能性があります。
Microsoft OneNoteは、その手軽さ、検索性、柔軟性から、社内マニュアル作成のツールとして有効な選択肢の一つです。特に小規模なチームでの利用や、非公式なナレッジ共有、Microsoft 365を既に活用している組織にとっては、始めやすいツールと言えるでしょう。
しかし、本格的なバージョン管理、厳密なワークフロー、高度なレイアウト、詳細な権限管理、安定したエクスポート品質といった面では明確な限界があります。OneNoteをマニュアル作成に活用して成功するためには、ツール自体の機能だけでなく、明確な構成計画、命名規則、テンプレート利用、更新プロセスの確立といった、組織的な規律(ガバナンス)を導入し、維持することが不可欠です。ただし、その規律を組織全体で継続的に維持するには相応の努力とコストが必要であり、マニュアルの重要性や規模、求められる品質レベルによっては、初期投資をしてでも専用ツールを導入する方が、結果的により効率的かつ確実な運用につながる場合があります。
もし、マニュアルの規模や重要性が増し、OneNoteでの運用に限界を感じ始めたら、SharePointの活用深化や、専用のナレッジベースツール、マニュアル作成ツールの導入を検討するタイミングかもしれません。
重要なのは、自社が作成したいマニュアルの種類、規模、必要な機能、そして運用体制などを考慮し、OneNoteのメリット・デメリットを正確に理解した上で、最適なツールを選択することです。この記事が、そのための判断材料となれば幸いです。
マニュアル関連でありがちな課題に沿って、目的別におすすめのマニュアル作成ツールをまとめました。ツール選定で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

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